
刺身に大根のツマがつく理由、知っていますか?
刺身を注文すると、必ずと言っていいほど添えられている大根の千切り。あれは「ツマ」と呼ばれますが、なぜ刺身には必ずツマがつくのでしょうか。
単なる飾りだと思って残していませんか? 実はツマには、科学的な理由があるのです。
ツマは「飾り」ではなく「薬味」
大根のツマは、見た目を華やかにするだけの飾りではありません。
大根には「イソチオシアネート」という辛味成分が含まれています。この成分には強い殺菌作用があり、生魚に付着している可能性のある細菌の繁殖を抑える効果があります。大根をすりおろしたときに感じるツンとした辛さは、このイソチオシアネートによるものです。
また、大根には「ジアスターゼ(アミラーゼ)」という消化酵素も豊富に含まれています。ジアスターゼは炭水化物の消化を助け、胃もたれを防ぐ働きがあります。刺身のような生の魚は消化に時間がかかることがありますが、大根と一緒に食べることで消化を助けてくれるのです。
つまり、ツマは「食べるべきもの」として添えられているのです。
「ツマ」と「ケン」は違う
実は、刺身に添えられる野菜には「ツマ」と「ケン」という2つの呼び方があります。料理人の世界では、これらを区別して使っています。
ケン(剣):
細く千切りにした大根のことを指します。刺身の下に敷かれたり、横に添えられたりする白い千切りがこれにあたります。「剣」の字が使われるのは、細く鋭い形状に由来するという説があります。
ツマ(妻):
刺身に添える薬味全般を指す言葉です。大葉、穂紫蘇、菊の花、ワカメ、ガリなども「ツマ」に含まれます。刺身という「主役」を引き立てる「妻」のような存在という意味が込められています。
厳密に言えば、大根の千切りは「ケン」と呼ぶのが正確です。しかし現在では、一般的に区別せず「ツマ」と呼ばれることが多くなっています。
江戸時代から続く知恵
刺身にツマを添える習慣は、江戸時代にはすでに定着していました。
冷蔵技術がなかった時代、生魚を安全に食べるための工夫が求められました。大根の殺菌作用を経験的に知っていた先人たちは、刺身に大根を添えることで食中毒のリスクを下げていたのです。科学的な分析がなかった時代に、経験則としてその効果を見出していたことには驚かされます。
また、白い大根は刺身の色を引き立てる効果もあります。マグロの鮮やかな赤やヒラメの透き通るような白が、大根の白を背景にして一層美しく見えるのです。
機能性と美しさを兼ね備えたツマは、日本料理の知恵の結晶と言えるでしょう。
まとめ
刺身に大根のツマがつく理由は、見た目の美しさだけではありませんでした。
- 殺菌作用:イソチオシアネートが細菌の繁殖を抑える
- 消化促進:ジアスターゼが消化を助ける
- 口直し:魚の脂っこさをさっぱりさせる
- 彩り:刺身の色を引き立てる
次に刺身を食べるとき、ツマも一緒に食べてみてください。先人たちの知恵が、あなたの食卓をより安全に、より美味しくしてくれるはずです。
参考文献・出典
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